こんにちは。本日のリレー日記を担当させていただきます、理工学部物理情報工学科3年の黒沢星海と申します。

例えば、車を運転して目的地に向かっているところを想像してみる。一般には、余裕をもって早く目的地に到着することは良いことであるだろう。より少ないガソリンで移動することも良いことだと思われる。当然のことだが、事故を起こさず安全に到着することも良いことである。

このとき、最も「良い」移動とはどのようなものであるだろうか。早く到着するために速度を上げ続ければ、当然ガソリンの消費は大きくなり、これらの「良さ」は相反することになる。そもそも、安全に到着することが絶対的な「良さ」でないとするならば、信号を無視して移動することが、最も早く到着することへの最適解と言えるだろう。人によって、場面によって捉え方が異なるこの問題を、どのように解けばいいだろうか。それぞれの感覚で、大雑把に分かればいいじゃないかと思う人もいるかもしれないが、科学はそれを許してくれないのである。

制御工学には、このような問題に対してきちんと解くプロセスが用意されている。ここでは詳細を述べることはしないが(というか、厳密な議論は私にできないので)、プロセスの根幹となる考え方について言及したい。Bellmanの最適性原理である。極めて砕けた表現をするならば、「すべての経路のうち、分割した部分経路がそれぞれ最適になるように進んでいけば、全体として最適な経路を進んだことと同じ」という原理である。なんとも一見難しそうな原理であるが、ふと思い返せば、同じような考え方はすでにほとんどの人が体験しているはずである。積分だ。書いて字の如く、分けて積み上げるという積分の概念、細かく分割して足し合わせていく操作は、まさに最適性原理と同じように感じる。これらのことから、大きな問題は、細かく捉えて1つ1つ解いていけばよいのである。ただしその分割の仕方には、おそらく無限の自由度がある。困難を減らすも増やすも分割の仕方次第なのだ。

私たちがなにか問題に出会ったとき、するべきことは真正面から向き合うことではない。大きな問題を1つ1つ小さなパーツに分けて、着実に解いていくことだと思う。過去の科学者たちがそうしてきたように、最もクレバーで、最もスタイリッシュで、最もアメイジングな方法で。

アカデミックな厳密さには目をつむっていただき、拙い文章となってしまいましたが、以上で本日のリレー日記とさせていただきます。ご精読ありがとうございました。