こんにちは。本日のリレー日記を担当させていただきます、理工学部物理情報工学科4年の黒沢星海です。
つひに行く道とはかねて聞きしかときのふけふとは思はざりしを
誰もが通る道だと聞いていたけれども、それが昨日や今日の話であるとは思わなかった。そんな意味の込められたこの句は、ちはやぶる、で有名な百人一首の歌の作者でもある在原業平の辞世の句だ。ここで言う「誰もが通る道」というのは、辞世の句であるからもちろん、死への道のことを意味している。六歌仙に選ばれるほどの著名で巧みな歌人であり、伊勢物語の主人公であるとも推察される彼は、優雅な人生の最期に何を思ったのだろうか。
4年生になったことの責任感について綴られた、先日の同期のリレー日記を読み、4月も後半にして、ついに最高学年になったことの重みを感じた。メールの署名など、テンプレートを用意していたものを書き換えなければ、と思いながら、メールを送ることなんてほとんどなかった大学入学当初を顧みる。体育館に入ると、真っ先に上級生に挨拶をして回っていた頃から年月が過ぎ、今では皆が集まってくる立場になってしまった。集合のときに名前を呼ばれる1つ上の先輩の姿を見て、何とも言えない妙な違和感を覚えた。これらの、とりとめない数多くの変化が、緩やかに時の流れを表している。
在原業平の句は、意外にも素朴であるなと感じた。優雅で色どりに満ちた歌を数々世に送り出した歌人の最期にしては、なんとも率直な表現である。しかし、深い悲しみや後悔は滲んでおらず、穏やかでどこか呑気な印象すら受ける。死を直前にして驚きつつも、大げさな未練や無念なく静かに自分の運命を受け入れる彼の句は、まさに雅と言えるのかもしれない。
入学して以来、多くの先輩方の背中を見て学び、共に励み、そして快く送り出してきた。こんなに早くやってくるとは思っていなかったが、今度は自分の番である。けれども、驚くことはない。穏やかに受け入れれば、これまでやってきたことと変わらないはずである。最後の試合を終えた私は、どのような句が詠めるのであろうか。ぜひとも、艶美な句でありたい。
拙い文章となってしまいましたが、以上で本日のリレー日記とさせていただきます。ご精読ありがとうございました。