漢 a.k.a.

こんにちは。本日のリレー日記を担当させていただきます、理工学部物理情報工学科3年の黒沢星海です。

時折訪れる暖かな陽気が、春のはじまりを想起させる時期になりました。厳しい冬の寒さが去り、暑いくらいの暖かな陽気がやって来ることは非常に嬉しいものです。その一方で、春とは、別れの機会が増える残酷な季節でもあります。

そして、この器械体操部にもお別れがやってきてしまいました。今回のリレー日記は、つい先日、遠く離れた地に異動された久永先生との思い出について綴ろうと思います。

私が慶應義塾大学に入学した年、久永先生は高校生のコーチとして、一年目のスタートを切ったタイミングでした。烏滸がましくも、同じ”一年生”として頑張ろうと意気込んでいた記憶があります。体操競技で名を轟かせたあの選手がコーチをしてくれる、どんなコミュニケーションが取れるだろうと私の胸には不安と期待が入り混じっていました。

しかし、実際に話してみると、練習中の久永先生は、そんな不安や期待を吹き飛ばすように、とにかくひっちゃかめっちゃかなことばかり口にしています。にやにやしながら近づいてきたと思ったら、突拍子もないことを言い始めて、またすぐに去っていきます。技が失敗して、柔道の受け身のようにゆかに倒れこむ様子を見て、「ミスタービーンのオープニング?」と一言添えに来たり、跳馬の積みから横に転げ落ちる音を聞いて、「bad guy?」と独特の感性を発揮したり、とある部員のあん馬の旋回を見て、「チリソースみたいなあん馬だな」とおそらく体操史以来初めての比喩を用いたりと、久永語録とでも言うべき数々の名シーン(?)は、思い返しても枚挙に暇がありません。

ここまで読んでいると、ふざけている印象ばかりですが、久永先生の体操への情熱には何度も何度も感服しました。特に中でも、2023年の長野全カレでの一幕がとても印象に残っています。人生2度目の全カレ出場でしたが、緊張から普段の動きを忘れ、初めてのミスで平行棒の一技目が不認定となってしまいました。その後の演技は何とか通しきることができたものの、一技目が認定されなかったことで技数不足となってしまいました。久永先生は、演技構成の認定について、一生懸命抗議してくれましたが、結局審判の判断が覆ることはありませんでした。覆らないと分かったあと、久永先生は主審の方に向けて、「彼の名誉のために」と自分たちの主張を再度言い残して、私たちは次の種目へとローテーションしていきました。先生の、体操への情熱と強い信念を垣間見た私は、感極まって少し涙を浮かべていました。信念を曲げずに突き進む姿は、今も私のお手本として胸に刻み込んでいます。

数々の思い出、体操への情熱をくださった久永先生がいなくなってしまうのは大変さみしいことですが、この辛さのあとに、甘さが広がる、チリソースのような人生であることを願い、これからも精進してまいりたいと思います。久永先生、ありがとうございました。

拙い文章となってしまいましたが、以上で本日のリレー日記とさせていただきます。ご精読ありがとうございました。