ノクターン

こんにちは。本日のリレー日記を担当させていただきます、理工学部物理情報工学科2年の黒沢星海です。

 「月が綺麗だな」彼はそう呟く。真ん丸の月が斜めに僕らを照らすから、夜はまだ始まったばかりである。こんな言葉を広く日本人に知らしめた夏目漱石のリリシズムには、畏敬の念さえ覚える。その一方で、月の美しさを表現する最も単純な表現を奪ったという点では、少しばかり恨めしくも思える。

 こんな節目のときには、懐かしの再会が付き物である。自分は今まで、こんなに多くの人と関わって生きてきたのだと実感する。月日が経てば、その出で立ちも変わってしまって、誰が誰だか分からないことが往々にしてある。エピソードも薄れてしまえば、もはや他人も同然であるが、ひとたび話せば思い出が湧き出てくる。もちろん、時間が変化させるのは姿だけではない。あの頃は飲めなかったお酒を片手に、語らうことだってできるようになった。それでも、食べるものは大して変わっていなかったりする。いつか、大人びた食事を嗜む人間になるのだろうかと想像してみるが、いまいち実感は湧かない。時間はいつだって同じように進むはずなのに、そんな単純には計算できない。ただ、人生100年時代と言われる現代において、未来を考えることが重要な意味を持つことは確かだ。あの頃、届きそうもなかった遠い未来が間違いなくここに存在する。時の流れは静かで、慥かで、晦渋である。劇的なことは起こってくれないだろう。だからこそ、今日に全身全霊でしがみつかなければならない。気がついた時には、流されてしまっているかもしれないのだ。

 また逢う日まで、と杯を交わせば、月は真上近くで輝いている。なんだかお赤飯が食べたい、20歳の誕生月である。

 拙い文章となってしまいましたが、以上で本日のリレー日記とさせていただきます。ご精読ありがとうございました。